河童のクゥと夏休み


(C) 2007 木暮正夫/「河童のクゥと夏休み」製作委員会


 クレヨンしんちゃんの劇場版で有名な原恵一さん.なんだかなっ.期待が大きすぎた.もちろん脚本のうまさは言うまでもなく,加えて鋭い表現力は抜群なのですが, 不可解なシーン(竜の登場),間延びするシーン(河童探しの旅の後半)が気になりました.そして,なによりもキャラクターデザインとの相性がとにかく悪い.せっかくの脚本がもったいない.5年に及ぶ製作期間はどのように分配されたのかが知りたい(作業期間は2年だから,構想に3年?).

 初の単独作品にしては,演出・表現が鋭どすぎた.もはや暴発.社会問題取り入れるなら,もう少し丸くしなきゃ,この作品のターゲットの一つである「夏休み映画を見に来る家族連れ」においては,両親(チョイスする親)に対しても,子供に対してもそっちの表現が脳内に焼きついてしまう.個人的には,ぜんっぜん構わないし,誤解することはないけど,大衆への誤解は促したくないなと.原さんには,鋭い表現力と共に,皆が安心して劇場に足を運べる国民的な監督になってもらいたいなと.そう思うています.さすがにあそこまでは想像していなかったもので・・・冒頭で,劇場が凍りついたのをヒリヒリと感じました.結構悩んだのでしょうが,クレヨンしんちゃんなど,ある程度制約が多そうな条件下で製作したほうが結果的には良く,今回は安心感が足りない.もう少し歴史を重ねて,体制を整えて,鈴木敏夫プロデューサー(スタジオジブリ)が勤めるフィルター的役割,解説者的役割果たすカリスマを加えて,本気で国民に浸透させて欲しいと願っています.

 本編に関しては,平凡ではあるが,暖かい家族の日常を描くことに本気さを感じました.また,人物設定にやりすぎ感がなく,とっても良かった(個人的には野原一家より好き).家族コミュニケーションとして,体と体のぶつかり合いを描くあの相撲にはセンスを感じます.更には,おっさん(登場人物の犬)の回想シーンで泣かせて,後にもう一回泣かせて(詳細割愛,劇場へGo),相撲シーンで意味不明に泣いて,合計3回は泣いたので個人的には大満足.この辺(上記2シーン)の鋭さはほんっとにすばらしい.それにしても,本作品における竜の位置づけが,ゲド戦記以上にわからん.この辺の暴発的表現を一般公開するには,体制的にも,歴史的にも,まだ早いことを感じました.今後に期待しまっす.