おもてなし

 お盆休み.家族旅行に群馬は四万温泉に出かけきた.有名な草津温泉から電車とバスで一時間程離れた所にある温泉街で,あの千と千尋の神隠しでおなじみの油屋の舞台ともなった旅館「積善館」がある.このお盆はそこに宿泊した.

http://sekizenkan.co.jp/
http://www.sekizenkan.co.jp/blog/

一度言ってみたいなと口にしていた私の気持ちに配慮して,母が予約をしてくれた.最近は,頻繁にテレビで取り上げられているためか人気殺到で予約が難しいらしい.
このお盆シーズンに,わずか一月足らず前に予約の電話をしたため,当然,空き部屋はなかった.母は,多少高額でも構わないのでキャンセルがあれば連絡が欲しいと,予約受付担当者にダメもとでお願いしたところ,二日経った日に折り返し連絡してくれて,なんとか宿泊できた.

今回のメインの話は,昨日の宿泊時の出来事で,「積善館」に働く女性二人のお話で,まるで千尋とりんを彷彿とさせる素敵な出来事についてお話します.通常お宿には,その日,旅の御一行をおもてなす専属の女中さんが就くが,この話の主人公の一人は,我々のおもてなし役に就いた一人の若い女中さんで,10代ではないと思いますが20代前半のお若い方です(仮に千尋と呼んじゃいます).千尋さんは,我々の夕食を運んで来てくださって,机にお料理を置く少しの間に,私や母とちょっとした雑談をしました.最寄のバス停にお迎えにきてくださったイケ面の男性従業員を心底気に入ってしまった母の話や,今回の予約を担当してくださった方の対応の素晴らしさなどです.とても気立てのよい女中さんで,我々の一方的な話に対しても丁寧にお答えくださいました.イケ面従業員の正体は,実は専務さんであったり,予約担当者の方は,実は千尋さんが尊敬する偉大な先輩であったりと館内で働く方々に関して理解が深まりました.

夕食を済まして,お風呂に入った後,事前にアナウンスされていた,子供向けの夏休み企画「顔なしと遊ぼう」に出かけました.その企画は,亭主さんが,亭主さんなりに理解する「顔なし」の本質について子供達用に噛み砕いてお話された後,なんと本物の顔なしが登場して,一緒に写真をとったり花火するという素敵な企画です.宮崎さんが訪れた際の写真をどうどうと紹介したり,この大胆な企画内容から察するに,おそらく簡単な許可が取られていることと思います.人を楽しませるというその企画の本質からも,いやらしさは全く感じられず,宮崎さんも快く了承されたことでしょう.
子供達に混じって顔なしと写真撮影などして遊んでいると,母と私に声をかける一人の女性が現れました.スーツのようなフォーマルな格好をされており,はっきりした顔立ちでとても美しく,見るからに仕事ができそうな女性です.その方の正体はすぐにわかりました.夕食時にお話した,予約担当者の粋な計らいに感激した旨を,千尋さんがご本人にお伝えして,わざわざ我々に挨拶をしにきてくださったのです(その方を,仮にりんさんとお呼びします).頂いた名刺をみると,予約やHP作成をご担当されているそうな.りんさんは,日頃から,より多くのお客さんに,楽しんで頂けるよう心がけているが故に,今回のような計らいをサラッと実行できた訳だし,その計らいの結果として,お客さんの喜びの声としてご自身にフィードバックされたことに,快く思ってい頂けていればと思います.更には,チャックアウトのときにもお出迎え頂けて,常にカメラをぶら下げていた私のために館内の写真をCD化したものをお土産にお渡ししてくださいました.なんとお気遣いの行き届いた旅館であることか.そして,今,帰宅してりんさんの手がけるHPをみると,今回宿泊した部屋は館内で一番高級なVIP部屋であったことが解った.自分の妄想の域を超えないが,通常は,なんと今回支払った料金の倍以上する部屋で,そこを予約する方は少なく,空いていために,無理してご用意してくださったように思えてしかたがない.

お客さんを第一に考え,そのための行動を自ら考えきちんと実行できる先輩従業員がいて,そのような尊敬できる先輩従業員を模範としながら仕事をする女中さんがいる素晴らしいお宿.しかもちゃんとお話をお伝えするという教育の行き届きようも半端ではない.自身のこれからの人生にも参考にしたいと思えた.まさに油屋のキャラクタの実写版を今回の旅で体験できました.ちなみに,イケ面従業員をハクと名づけよう.とってもよいお盆休みであった.

    • 館内をご紹介 --