トイストーリー3

シリーズ最高秀作.
ストーリーの完成度の高さにはいつも驚かされるのがピクサー作品だが,年のせいか,最近の作品ではそれほど心に響かなかったのも事実.制作スタッフがなにがしたいのかよくわからなかった.
本作のストーリーテーリングは,映画の古臭い基本構成をやや自虐的に踏襲し,最近の作品郡のネガティブウェーブを見事に断ち切ることに成功している(たぶん以降の興行成績も安心).
更に,本作はストーリーとは別に,アニメーション(キャラクタの動き)の多様さが一際目良かった.
トイストーリーのキャラクタアニメーションと言えば,おもちゃ本来の特性である無機質さを逆手にとって,コンピュータツールの表現力不足を誤魔化しているかのように見えたのだが,今回は一味違うのだ.劇場の皆が,キャラクタのうごき一つ一つに笑うのだ.見ていてとっても面白い.アニメータの表現力が,ソフトウェアツールの能力を凌駕しているように見えた.バズのフラメンコダンスは,目でギリギリ追えるくらいのスピードで,間接が四方八方,コミカルに動くのためか,見ていて笑いが止まらない.ポテトヘッドの筐体がトルティーヤに変わるシーンでは,トルティーヤにプラスティックパーツを取り付けた際に生じる重力の悪戯が,とてもコミカルでこれまた笑いがとまらない.トランスフォーマー2を引き合いに出すと,トランスフォーム時,とてつなく部品が動いていることはなんとなく解るが,短いシーンにあれだけのハイスピードアニメーションを詰め込まれても,見ているこっちはなんのこっちゃ解らない.申し訳ないが変身シーンになんの高揚感も感じなかった.非人間キャラ(CGキャラ)に命をどう吹き込むかはとっても大切で,キャラを生かすも殺すも,アニメータの,キャラクタに対する愛が重要だということ.トランスフォーマーのアニメータは,CGアニメツールの機能を愛しているのであって,キャラクタ自身への愛が不足し,最新技術をひけらかすだけの自己満足のようで.見ていてもつまらない.
が,本作はそれとは全く対照的だ.アニメータはツールというおもちゃの本質を理解し,キャラクタに主軸を置いている(キャラタを重視している),アニメータはツールとCGキャラクタを用いて,目いっぱい遊ぶ.やがて想像力は大爆発し,結果,観客を心底笑わせるアニメーションを生む.まるで,アンディがウッディや,バス,ポテトヘッドを愛し,遊んでいる風景のように,見ていてハートがウォーミングするのだ.
アニメーションに対する姿勢,というか観客を楽しませなきゃ意味が無いという姿勢は,国内のジブリスタジオと完全に共通する.周知であるが,駿さんの作品の,キャラクの動きはとっても多彩で,見ていて面白い.カリ城ルパンの動き,未来少年コナンの動き,ハイジ,千尋,ポニョ.どれも仮想キャラであるころを忘れてしまう程,生命力に満ち溢れ,見ていて好きになっちゃう程だ.本作は,駿さんのキャラクタ同様,おもちゃとは思えないほど,生命力にあふれた演出が目玉である.見ていて面白いのは,そのせいだ.ジブリからインスパイアするべきポイントをよく解ってらっしゃる証拠である.
なので,トトロのぬいぐるみが出演し,ピクサースタジオがジブリスタジオのアニメーションクオリティを参考にしているのがよく解る,トトロ出演はとってもうれしかった.

(ネタばれ)最も評価すべきは,映画のクライマックスで,ウッディとバズ達が,おもちゃの終着駅である焼却所の炎に燃やされそうになるのだが,皆で手をつないで最後を迎えようとするサイレントシーンがある.あれはほんっとに,やばかった.度肝を抜く演出で,うまく伝えられないが,ダークナイトのジョーカーと同レベルの演技力が,CGのおもちゃに吹き込まれていると言っても過言では無い.アニメータの表現力が,CGキャラが,ヒースレジャーの域に達した歴史的シーン.おそらく馴染みのキャラクタ達も3で引退する.最後の演技なのだ.最後を意識しているからこそ到達する域.やばかった.映画の結末でも,大学生になるアンディはおもちゃをとっても大切にする少女におもちゃ達を託す.それはまるで,ラセターさんらが次の世代のアニメータに,共に育ったおもちゃ(資産)を,次世代のアニメータに託すように.90sのコンテンツ産業の根幹を気づいてきた,アメリカ,日本の巨匠達(ラセターさんやピクサーを牽引した歴代の監督達,駿さん)の思いは一緒なのがよく解る.次世代達は大変で,超えるべきハードルを上げてくれた(次世代達にとっては迷惑な作品.だが,とっても幸せな)魂の一作.ピクサー1の完成度で,映画としても最高秀作.本質的に,クレしん原恵一作品(大人帝国,戦国アッパレ)に近しい作品.大人も子供も必見!!世界的名作.